証券コラム

2015/04/03 山崎元「ホンネの投資教室」

第242回 インデックス運用、3つの長所を整理する

筆者は、近年、一般の個人投資家に対してインデックス運用の利用を勧めることが多い。新年度に入ったことでもあり、今回は、インデックス運用について、特にその長所を、初心者読者を念頭に置きつつ整理しておこう。

実は、かつて、筆者は、自分で個別の株式を選んで十数銘柄以上の銘柄に分散投資した自家運用ポートフォリオを勧めることが多かったが、

(1)近年のインデックス運用商品の改善、
(2)ETF(上場型投資信託)の普及、
(3)多くの投資家にとって株式ポートフォリオの運用が技術的に難しいこと、

などの理由から、リスク資産運用部分については「内外の株式のインデックス・ファンドに投資すればよい(比率は5:5又は海外6:国内4など)」とアドバイスする場合が多い。

個別株でポートフォリオを作って運用することについては、

(A)分散投資でリスク低減が十分可能だし、
(B)継続的な手数料が掛からない有利さがあるし、
(C)(面白い人にとっては)それ自体が面白いゲームでもある、

という理由から、それ自体が十分合理的なやり方だし、「できれば、多くの人にやって欲しい」と思っているのだが、「運用が仕事でも趣味でもない」という多くの人にとっては些か面倒なのだろうと判断している。

インデックス運用の長所は、1.手数料が安い、2.分かりやすい、3.負けにくい、の3点に集約出来る。

1.インデックス運用は手数料が安い

インデックス運用の商品の手数料は、公募の投資信託で通常ノーロード(販売手数料ゼロ)で信託報酬が年率0.5%前後、ETF上場投資信託)では上場株式と同様の売買手数料が掛かるものの(ネット証券を利用すると売買代金の0.1%未満になることが多い)信託報酬が年率0.1%程度のものがあり、同じアセットクラス(「国内株式」、「外国株式」等の資産種類の分類)のアクティブ運用の商品と比較すると、圧倒的に安い。

アクティブ運用の商品は、公募の投信では販売手数料が2~3%で信託報酬が1.5%を超えるものが多く、比較的良心的な価格設定の商品でもノーロードで信託報酬が1%といったものが多い(手数料は何れも税抜きベース)。

インデックス運用の商品の手数料が安い理由は、「株価指数と同じ銘柄・ウェイトでポートフォリオを作って運用すればいいので、アナリストによる投資銘柄の調査やファンドマネジャーによる銘柄選択、ポートフォリオ構築などの手間が不要なので、安価に運用出来る」というのが、運用会社の建前上の言い分だ。

しかし、アクティブ運用の商品にあって、リサーチが本当に利用されていてコストが掛かっているかは個別に差はあるが大いに怪しく、それが役に立っているかとなると更に怪しい。また、システムや事務的なコストは銘柄数の多いインデックス運用の方が掛かっているのではないかと思われるケースもある。

アクティブ運用の商品に対する手数料の高い値付けは、自社に運用能力があることにしてこれを高く売りたいと考える運用会社側のビジネス的思惑を強く反映したものだといえるだろう。

また、アクティブ運用とインデックス運用では、前者の方がファンド内での銘柄の入れ替えに伴う売買コストが大きい場合が多く、この点でもインデックス運用の方が「余計な手数料が掛かっていない」と言える。

運用商品における手数料の差をどう評価するかだが、第一に手数料は「リスク・ゼロで発生するマイナスのリターン」であり、確実に運用パフォーマンスを悪化させる原因だ。

また、事後的にはアクティブ運用が手数料差の分だけインデックス運用を上回っていればいいのだが、事前の期待値ベースでは(即ち投資する商品を選択する段階では)、細かな計算を省略するが、アクティブ運用に伴うリスク(「アクティブ・リスク」と呼ぶ)の増加を相殺する追加リターンの必要性を考慮すると、運用そのものにおいて、アクティブ運用はインデックス運用に対して、手数料差の2倍以上期待リターンでプラスの差を持たなければならない。

ところが、現実には、アクティブ運用商品の平均的な運用パフォーマンスは、インデックス運用商品のパフォーマンスを下回ることが多い。

運用会社や販売会社は強調しないが、運用商品の選択にあって、手数料の差は圧倒的に重要な要素だ。同じアセットクラスの商品を較べる場合、「1.アセットクラスのリターン + 2.運用の巧拙によるリターン - 3.手数料」がトータルのリターンになる訳だが、1は共通であり、2を第三者が正しく評価することが難しいとするなら、3の差を見て、手数料のより安い商品を選択することが「投資家が自分でできる運用の改善」として、ほぼ唯一の重要ポイントなのだ。

運用商品の選択・評価にあっては「市場の予測」と「器としての商品の評価」を分けて考えることが重要であり、後者で相対的に劣る商品に出る幕はない。

一方、手数料の高い商品を売りたい金融機関の側では、投資家に1、2、3を混ぜて考えさせようとすることが多い。

しかし、2は誰にも正しく評価出来ないので脇に置くとするなら、1の見通しが良くても悪くても、3で劣る商品は同じアセットクラスの商品に「常に相対的に劣る」ことになる。筆者が、既存の投資信託商品の9割以上は「はじめから検討にすら値しない」と自信を持って言い切るのは、これが理由だ。

筆者は、この考え方を、何度か原稿に書き、セミナーやイベントなどで話して来たが、今まで有効な反論を受けたことは一度もない。アクティブ運用を応援したいという心情は筆者も理解し共感もするが、他人に対するアドバイスとしては、良心に従うなら、明らかに手数料の高い商品を勧める訳にはいかない。

例えば、同じ国内株式の商品であれば、年率で1%も差が付くと、評価上は「勝負にならない」と筆者は考える。

アクティブ運用の運用者が、「手数料の差に十分見合う以上のアクティブ・リターンをかせぐ自信がある」というなら、彼(彼女)は、他人のお金でなく、自分のお金を運用している方が自然だ。

2.インデックス運用は分かりやすい

特に、運用に手間と時間を掛けることができない個人投資家にとって、インデックス運用が複数の意味で「分かりやすい」ことの長所も強調しておきたい。

先ず、インデックス運用の場合、たとえば国内株式であればTOPIX東証株価指数)のようなインデックスの過去の変動を見ることによって、自分が投資しようとしているポートフォリオが持っているリスクやリターンの特性を大まかに知ることができる。

これに対して、アクティブ運用のポートフォリオの場合、同じ運用者の長期に亘る運用パフォーマンスを見ることが難しい場合が多いし、運用者がおなじであっても運用方針が変わることがあり得るので、過去を将来の参考にできる程度がインデックス運用の場合ほどでないことが多い。

第二の「分かりやすさ」として、現状把握の容易さが挙げられよう。例えば、TOPIX連動のインデックス投信に投資していれば、TOPIXの変動を見ておくと、自分の投資している資金の時価価値や運用パフォーマンスをほぼ正確に且つ同時的に把握しておくことができる。

自分が投資している投資信託の基準価額を調べることは、ほんの「一手間」ではあるが、手間が掛かるにはちがいない。インデックス運用の商品に投資していると、日々のニュースと自分の投資の関係についても、インデックスの値の変化と共に情報が意識にインプットされる効果がある。

インデックスの変動に連動して自分のお金が増えたり減ったりしているのだ、という実感があれば、運用の「リスク」について、実感を伴った知識を早く持ちやすいだろう。

尚、国内株式のインデックスを見る上で、日経平均はポピュラーで馴染みやすいインデックスだが、2000年4月の銘柄入れ替えの際に、実質的に50%強が入れ替わり、これが市場参加者に利用された結果、市場の変動とは関係のない10%以上の下ブレを起こし、前後に連続性の断絶が起きたことに注意して置きたい。

この時の銘柄入れ替えでは、証券業界が2000億円以上のトレーディング益を稼ぐ一方で、日経平均連動のインデックス・ファンドへの投資家や、日経平均先物をロング(買い持ち)していた投資家が大きく損をした。

やり方が変わったことで、その後日経平均の銘柄入れ替えが大きなマイナスのインパクトを持ったことはないが、「2000年4月の断絶」には、分析上注意が必要だ。

もう一つの大きな長所は、アセット・アロケーション(資産配分)との整合性が取りやすいことの「分かりやすさ」だ。

アセット・アロケーションに使う「国内株式」、「外国株式」といったアセットクラスを代表するベンチマークは、多くの場合既存のインデックスであり、このインデックスを運用目標とするインデックス運用商品に投資すると、アセット・アロケーションと整合的な運用を無理なく行うことができる。

仮に、バリュー運用のアクティブ運用に投資するとすれば、厳密には、アセット・アロケーションにあっても、バリュー運用を代表する指数を使いたくなるが、現実に使おうとするアクティブ運用と合致するベンチマークのデータを得ることは容易ではない。

「大まかにはTOPIXでいいではないか」という意見は勿論あり得るが、TOPIXと十分異なる事に期待をかけてより高い手数料を払ってアクティブ運用の商品に投資するのだから、これは「残念な」運用管理である。

機関投資家の運用にあって、運用管理のやりやすさ、計画と実行の整合性といった点については、インデックス運用が断然合理的だといえる。データや分析に関するリソースを豊富に持っている機関投資家にあってもメリットがあるのだから、まして、アクティブ・リスクの大きさや内容を数量的に把握することが難しい個人投資家にあっては、インデックス運用の優位性が明らかだ。

3.インデックス運用は負けにくい

目標とするインデックスの内容にもよるが、時価総額加重の市場平均を表現しようとするS&P500やTOPIXのような指数の場合、アクティブ運用の平均には明らかに負けにくい。

アクティブ運用がいいか、インデックス運用がいいかに関しては、古来さまざまな意見がある。

この際に、議論の「分かれ目」は「市場の効率性」を認めるか否かに求められることが多いが、これは正確な議論ではない。

市場が効率的であるとは、情報は資産の価格に迅速に正しく反映している状態を指すので、この場合にアクティブ運用に市場平均を体現するようなインデックス運用には勝つチャンスが無い。ここまではいいのだが、この先、市場が非効率的であるなら、アクティブ運用にチャンスがあるから、アクティブ運用の方がいいと論ずるなら、そこには現実と合わない重大な飛躍がある。

アクティブ運用にチャンスがあるということと、現実のアクティブ運用がこのチャンスを有意に有利に利用出来ることとは同一ではない。

実際には、アクティブ運用投資家の間で常に勝ったり負けたりが行われていて、彼らの平均はポートフォリオとして、市場平均を表すインデックスと一致するので、売買手数料と運用手数料の差を考えると、インデックス運用は、アクティブ運用の平均に勝ちやすい構造になっている。

そして、この優位性は、市場が効率的であることにのみ依存する訳ではない。

アクティブ運用に投資することが投資家にとって合理的になるのは、

(i)市場が非効率的でアクティブ運用にチャンスが存在し、
(ii)特定のアクティブ運用者が他のアクティブ運用者に対して相対的な優位を持ち、
(iii)投資家が優位なアクティブ運用者を事前に特定出来る方法がある、

という3条件が全て揃った時に限られるのだが、全てが揃っていると考えることにリアリティがあるケースは殆ど無い。

こうした「ライバルの平均を持つことの相対的優位性」は、本連載の223回目「インデックス運用が最強である理由」でも詳しく説明したが、現実の運用商品に当てはめた場合、インデックス運用が「負けにくい」という長所に直結している。

理念的には「市場平均」のポートフォリオ以外は全て「アクティブ運用」だと考える事ができるが、ビジネスとして他人のために行われるアクティブ運用と、企業や個が自分のために行っている株式保有との間に、傾向的な差が出来た場合に、商業的なアクティブ運用の平均が市場平均に勝つことが時々あり得るが、日米共にアクティブ運用の平均は、市場平均を代表するインデックス運用に勝てない場合が多い(だいたい10回に6~7回は勝てない)。

加えて、複数のアクティブ運用商品間で、相対的にどれが優れているかを「事前に」評価・選択することは出来ないし、現実の商品にあっては、アクティブ運用商品の方が手数料が高い。

論理的に導くことができる結論は、「意思決定として、アクティブ運用商品を買うことは、インデックス運用商品を買うことに劣る」ということだ。

もう少し前向きに言い換えると「インデックス運用商品は個人投資家にとって得で且つ扱いやすい投資対象だ」ということになる。

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