証券コラム

2015/07/24 山崎元「ホンネの投資教室」

第250回 親子で考える、真夏のマネー常識12問

問題編

個人的な話で恐縮ながら、ある大学が主催する一般人と学生両方を相手にした講演の講師を依頼された。聴衆は、大学生の他に、大学生の親、それに高校生くらいの子供まで対象に含まれるという。

高校生にも分かる話で、親にも参考になり、近い将来卒業する大学生にとって実用的な話をしたい。筆者は、現在、獨協大学で「金融資産運用論」というタイトルの授業を週に2コマ担当しているが、この授業で学生に伝えたことなどを中心に、「ウソ」か「ホント」かを考えて貰う簡単なテストを作った。

問題は12問あるが、それぞれの問題の文章がウソかホントか、読者も考えてみて欲しい。お時間があれば、お子様、あるいは親御さんと一緒に考えてくれると嬉しい。

以下、テストの問題を掲げる。

【人生で大切な「お金の常識」 ウソ? ホント? 12問】


以下の、各問の内容が、「ウソ!」か「ホント!」かを答えて下さい。

  1. テーマ:銀行員
    「お金の相談は、信頼出来る銀行員に相談するのがいい?」
  2. テーマ:借金
    「カードのリボ払いで買い物する恋人とは結婚しない方がいい?」
  3. テーマ:生命保険
    「生命保険に入るのは、社会人の常識の一つだ?」
  4. テーマ:医療保険
    「死亡保障の保険は不要だけれど、がん保険などの医療保険は入っておく方がいい?」
  5. テーマ:住宅
    「賃貸住まいは家賃の払い損なので、ローンが組めるなら住宅を買う方が得だ?」
  6. テーマ:公的年金
    「20年、30年後に、公的年金は積立金が枯渇して破綻する可能性が大きい?」
  7. テーマ:国債
    「日本国債暴落に強い商品が、実は国債の中にある?」
  8. テーマ:投資と投機
    「金は単なる投機の対象であり、長期的な資産形成にふさわしい投資対象ではない?」
  9. テーマ:外国為替
    「高金利な通貨の預金は、為替リスクがあるが、期待出来るリターンが高い?」
  10. テーマ:インカム・ゲイン
    「高齢者にとっては、利息・配当・分配金などのインカム・ゲインを目指す運用が健全で好ましい?」
  11. テーマ:リスク
    「目標とする運用利回り(リターン)を先に決めるのは、リスクを無視した危険な手順だ。
  12. テーマ:手数料
    「投資信託は運用の上手い下手に関係なく、先ずは手数料の安いものを選ぶのが正しい?」

解答編

それでは、各問について筆者が考える解答を簡単に説明する。読者の便利のために、問題を再掲してから、答えを提示し、簡単な理由と補足を述べる。

1. テーマ:銀行員

「お金の相談は、信頼出来る銀行員に相談するのがいい?」

正解は「ウソ!」

そもそも運用を考える顧客から見て、「信頼出来る銀行員」自体が殆ど形容矛盾であり、銀行員は「手強すぎるセールスマン」だ。証券マンも保険屋さんも警戒すべきセールスマンだが、銀行員は顧客のお金の流れをよく知っている分、彼らよりも厄介だ。相談が無料であっても、相手にしない方がいい。

加えて、銀行の店頭には、投資対象として適切な運用商品が無いことが殆どだ(手数料が高すぎることが主な理由。唯一の例外は個人向け国債だ)。

銀行は、ATMとネット取引を有効に使って、銀行員と顔を合わさずに使うことがコツだ。

2. テーマ:借金

「カードのリボ払いで買い物する恋人とは結婚しない方がいい?」

正解は「ホント!」

小さな額でも借金は不利だ。運用に期待出来る利回りよりも遥かに高い。こうしたことに鈍感な経済観念の乏しい配偶者と暮らすと、男女ともに苦労する。筆者は、大学で毎年学生にこの話をしている。

3. テーマ:生命保険

「生命保険に入るのは、社会人の常識の一つだ?」

正解は「ウソ!」

保険の本質は「損な賭け」であり、出来るだけ利用しないのが正しい。特に、新入社員の頃に、先輩に紹介されて保険に入らないことが肝心であり、これを知っておくだけで、何十万円分得になる。

生命保険が唯一必要なのは、貧乏な夫婦に子供が出来た場合だけであり、この場合、10年ないし、せいぜい長くて20年くらいの掛け捨ての死亡保障の保険に入る。特約のない、シンプルで、保険料の安い保険を選んで入ること。

4. テーマ:医療保険

「死亡保障の保険は不要だけれど、がん保険などの医療保険は入っておく方がいい?」

正解は「ウソ!」

健康保険には高額療養費制度があるので、一時的に多額の医療費が必要になっても大丈夫であり、民間の医療保険は不要。また、民間会社の医療保険は、保険料が法外に高いと言われている。保険料を払ったつもりで、同額を貯金する方がずっといい。

5. テーマ:住宅

「賃貸住まいは家賃の払い損なので、ローンが組めるなら住宅を買う方が得だ?」

正解は「ウソ!」

住宅購入の可否は、第一に投資対象として住宅価格を評価して行うべきで、高ければ買わない、安ければ買ってもいい、が大原則。自分が住む不動産も、「自分が店子である住宅への投資」なので、例外ではない。

但し、現実に売り出されている住宅は価格が高いことが多い。

また、住宅ローンは、現金購入よりも「銀行の儲け分」だけ追加的に損であり、また、ローン付きの住宅購入は、株式投資でいうなら「長期間の信用取引」であり、リスクが過大だ。

賃貸暮らしだと、生活の変化に合わせて、立地や間取りの変更が容易な点も考慮に加えたい。

6. テーマ:公的年金

「20年、30年後に、公的年金は積立金が枯渇して破綻する可能性が大きい?」

正解は「ウソ!」

政府の試算によると、現在60%程度の所得代替率がまあまあ好調な経済状況を前提として50%に二割程度下がる予定であり、積立金が枯渇するケースでは39%と試算されている。日本の公的年金は、賦課方式なので、積立金が無くなっても破綻はしない。

国民年金の保険料を国が半分負担していること、確定拠出年金等の有利な運用を利用するためには公的年金の加入が必要なことを勘案すると、そこそこの所得が見込まれる人は、公的年金に加入する方が得策だ。

7. テーマ:国債

「日本国債暴落に強い商品が、実は国債の中にある?」

正解は「ホント!」

国債暴落とは長期国債の利回りが大きく急上昇して価格が暴落することだが、「個人向け国債変動金利10年型」は半年単位の変動金利(10年債利回りの66%)であり、元本割れしない仕組みなので、金利上昇に強い。

国債暴落の際に、資産運用状況が悪化して破綻する銀行が出る可能性があるが、個人向け国債(変動10)は大丈夫だ。現在、個人が多額のお金をほぼリスク無しで運用しようとする場合の最有力選択肢だ。

一つの注意点は、金融機関の窓口に買いに行くと、別の手数料が高い金融商品をしつこく勧められることがある点だ。覚悟を決めて窓口に行くか、ネット証券で買うかしよう。

8. テーマ:投資と投機

「金は単なる投機の対象であり、長期的な資産形成にふさわしい投資対象ではない?」

正解は「ホント!」

金の購入・保有は、将来の金価格に対する賭であって、生産活動に資本を提供する行為ではない。基本的にゼロサム・ゲームに賭けるような「投機のリスク」だ。FX外国為替証拠金取引)、商品先物なども同様のリスクだ。

これに対して、株式、債券、不動産等の資本を提供するリスクを取る場合、市場に於いてリスクを反映したリターンを見込める価格形成がなされることが期待出来る。こちらは「投資のリスク」と考えてよい。

一般論として、長期的な資産形成には、投資のリスクを取る方が有利だ。

9. テーマ:外国為替

「高金利な通貨の預金は、為替リスクがあるが、期待出来るリターンが高い?」

正解は「ウソ!」

外国為替は、金利と通貨の交換比を「セットで取引する」ゼロサム・ゲームであり、高金利通貨・低金利通貨何れの通貨での運用が有利だとは一概にはいえない。

しかし、外貨建てであっても高金利通貨は「期待(平均的に予想される)リターン」が高いと誤解している人が多く、金融機関はこの誤解につけ込んだ商品設計やセールス活動を行っているので注意したい。

10. テーマ:インカム・ゲイン

「高齢者にとっては、利息・配当・分配金などのインカム・ゲインを目指す運用が健全で好ましい?」

正解は「ウソ!」

インカム・ゲイン狙いの運用が健全だというのは古い誤った常識であり、正しくは「インカム・ゲインとキャピタル・ゲインは合わせて評価すべし」ということが大原則だ。

インカム・ゲインを強調した運用商品セールスは、金融リテラシーの乏しい客を釣ろうとするタチの悪いマーケティング手法なので、大いに警戒したい。

筆者の個人的な評価として、現行の「毎月分配型ファンド」は、仕組みとして不利であると同時に手数料が高く、投資に不適切な商品だ。

11. テーマ:リスク

「目標とする運用利回り(リターン)を先に決めるのは、リスクを無視した危険な手順だ。

正解は「ホント!」

自分が取ることのできるリスクの範囲内で、自分にとって最適なリスクと期待リターンをもたらすと考える組み合わせを選択することが、現実的で正しい方法だ(人生でも同じだろう)。

しかし、公的年金の運用計画から、二流以下のFPの運用アドバイスなどに、この原則を満たさないケースがあることは残念だ。

12. テーマ:手数料

「投資信託は運用の上手い下手に関係なく、先ずは手数料の安いものを選ぶのが正しい?」

正解は「ホント!」

同じ資産カテゴリー(例えば国内株式)運用商品のリターンは、(1)市場の平均的なリターン、(2)運用スキルのリターン、(3)(- 手数料)の3者の合計だ。

これらのうち、(1)は同カテゴリー内で共通であり、(2)はこれを「事前に」評価することはプロにもアマにも不可能だ。残された(3)の手数料に於ける差は、「確実な差」なので、運用商品選択で決定的な差となる。

運用商品の評価は先ず(3)から行うべきであり、(3)の比較に於いてダメなものは、最初から投資の検討対象に入らない。

例えば、手数料を考えると、銀行の外貨預金は円安でも円高でもダメな商品であり、既存の投資信託も9割以上の商品をはじめから除外出来る。

まとめ

本欄の継続的読者なら、全問正解出来たと期待するが、読者の正解率はいかがだったろうか。

一般向けの講演では、上記12問の教訓を以下の四原則にまとめようと思っている。

【お金で大切な四原則】


  1. 無駄な損をしない
  2. 他人を信用しない
  3. 手数料を重視する
  4. リスクを先に考える

後は、「買っていい商品全てのリスト」(5品目のみ)と、「買ってはいけない商品・サービスの一部のリスト」(多数あり)を用意して、講演に臨もうと思っている。内容は、ご想像におまかせします!

本資料は情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。
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